本/水墨画水墨美術大系梁楷因陀羅月報付画集作品集中国絵画南宋画元代白描画山水画道釈人物画禅画文人画掛軸掛物煎茶道図版解説中国古美術

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水墨美術大系 第四巻 梁楷・因陀羅 月報付 
川上涇 戸田禎佑 海老根聰郎 編 
講談社  1975年 初版  183ページ カラー・モノクロ 原色図版・単色図版  約 44×31×4cm  約 3.8kg  当時の定価 17,000円 
※月報付 
日本と中国の水墨画の集大成の大型図録本、水墨美術大系の一冊。 『梁楷・因陀羅』と題するこの巻には、これら両画人の作品を中心に、南宋画・宋元画の国宝・重要文化財をはじめとした水墨画と白描系の画蹟127図・参考図版42図を掲載。 観音図・羅漢図などの仏画、祖師画、山水画、人物画、花鳥画、美人画など、日本国内の美術館博物館蔵品、寺院所蔵品、個人蔵品、米国の美術館博物館蔵品のカラー・モノクロ図版を収載したもの。 巻末に、127図の詳細な解説もあわせて収録。  大型本のため、画集・作品集として細部までじっくりと見ることができる上、真贋鑑定、年代特定の参考にもなり、論考も含めて読みごたえのある、愛好家必携の貴重な資料本。煎茶道、茶道などの掛物としてよく使われる禅画、文人画、画題などの研究にも役立つ、情報満載の一冊です。 
【目次】  梁楷・因陀羅序説 川上涇  梁楷・牧谿・因陀羅をめぐる二三の問題 戸田禎佑  元代白描画-その諸相- 海老根聰郎 

図版解説  川上涇  戸田禎佑  海老根聰郎  鶴田武良 
原色図版  孝経図巻(部分)伝李公麟  雪景山水図 梁楷  出山釈迦図 梁楷   六祖戴竹図 梁楷   李白吟行図 梁楷   観音図(阿弥陀三原像三幅の内部分)普悦  馬郎婦観音図(部分)  白衣観音図  観音図  四天王図(四幅の内部分)  羅漢図(部分)  維摩図  羅漢図(部分)  四睡図  四睡図  牧牛図(部分)毛倫  維摩図 因陀羅  布袋図(禅機図巻断簡)因陀羅  李渤参智常図(禅機図巻断簡)因陀羅  寒山拾得図(褝機図巻断簡)因陀羅  五祖再来図因陀羅  羅漢図冊午九面の内)雪菴  竹石図 顧安  明皇避暑宮図 伝郭忠恕 
単色図版  竹林燕居図 李璋  朝元仙仗図巻(部分) 伝武宗元  孝経図巻(部分)伝李公麟  後石壁賦図巻 伝喬仲常  六祖破経図 梁楷  布袋図 梁楷  寒山拾得図 梁楷  雪景山水図 伝梁楷  策杖図 伝梁楷  雪禽図 伝梁楷  水鴉図 伝梁楷  蘆鴨図 伝梁楷  豊干布袋図(二幅)李確  阿弥陀三尊像(三幅)普悦  観音図  観音図  馬郎婦観音図  馬郎婦観音図  十六応真図巻(部分)伝凡隆  九歌図巻(部分)伝張敦礼  万騎図巻 伝趙麟  明妃出宗図巻(部分)宮素然  姨母養育図巻 伝王振鵬  観音図 伝王振鵬  陶淵明図巻(部分)伝朱徳潤  人形図(唐絵手鑑筆耕園の内)伝趙孟?  羅漢図  十八羅漢図(二幅)  十八羅漢図(二幅)  十八羅漢図(二幅)  羅漢図  羅漢図(唐絵手鑑筆耕園の内)伝任仁発  維摩図  提婆王図  四天王図(四幅の内)  仙人図 伝趙雍  観音図  蘆葉達磨図  馬祖鹿居士問答図  十八羅漢図  白衣観音図  観音図 絶際永中  観音図  白衣観音図  馬郎婦観音図・魚籃観音図(二幅)  寒山拾得図(二幅)  十六羅漢図采六幅の内)伝蔡山  羅漢図 蔡山  壽星図  水月観音図 伝顔輝  白衣観音図  牧庵法忠像  中峰明本像 一菴  丹霞焼仏図(禅機図巻断簡)因陀羅  智常禅師図(禅機図巻断簡)因陀羅  寒山図 伝因陀羅  寒山拾得図(二幅)伝因陀羅  閠王参雪峰図 伝因陀羅  船子爽山図 伝因陀羅  寒山拾得図(二幅)伝因陀羅  五祖再来図 伝因陀羅  魚籃観音図 伝管道昇  蘆葉達磨図 伝因陀羅  鷄骨図 伝梁楷  元夜出遊図巻   牧牛図 毛倫  牧牛図 毛倫  栗鼠図 松田  葡萄垂架図 伝任仁発  墨梅図 呉太素  蘭石図 雪窓  三清図(三幅の内)  参考図版  溌墨仙人図(伝梁楷) 芙蓉水鳥図(伝梁楷) 王義之書扇図(伝梁楷) 論道図(伝梁楷) 王義之書扇図(伝梁楷) 三高遊賞図(伝梁楷) 秋柳双雅図(伝梁楷) 梁楷東方朔図(模本) 梁楷李白吟行図(模本) 証楷寒山拾得図(模本) 梁楷酔翁図(模  本) 梁楷布袋図(模本) 梁楷猪頭図(模本) 梁楷布袋図(模本) 梁楷松下琴客図(模本) 梁楷松下囲碁図(模本) 梁楷寿老人図(模本) 梁楷説子図(模本) デモン図 梁楷耕織図巻(模本) 五馬図巻(李公麟) 免冑図(李公麟)   巻(牟益) 九歌図巻(張渥) 瑶池仙慶図(張渥) 洛神女図(衛九鼎) 維摩図 雪夜訪戴図(張渥) 価林観音図(夏仲昭)  寒山拾得図(伝因陀羅) 寒山拾得図(伝因陀羅) 漢苑図(李容瑾) 龍池競渡図巻(王振鵬) 雪霽江行図(伝郭忠恕) 広寒宮図 水仙図巻(趙孟堅) 水仙図巻(趙孟堅) 水仙図(伝趙子昂) 竹石集禽図(王淵) 山茶図(銭選) 
資料  年譜  参考文献  図版目録 英訳 江上綏 
【例言】  一、本全集は、日本と中国の水墨画の集大成である。  一、第一巻「白描画から水墨画への展開」は、とくに本全集の序論として、日本と中国それぞれの墨画の源流について概観した。  一、墨画淡彩は、水墨画と深い関連をもつ意味合いから、それを取上げることにした。  一、部分図を掲載したものについては、挿図あるいは参考図版にその全図を提示することに努めた。  一、画題の名称には、編集執筆者が選定、命名したものもある。  一、所蔵者の氏名表示は、国、博物館、美術館、社寺、学校等の公共的機関のほか、国宝、重要文化財等の指定品の所蔵者にとどめた。  一、図版目録に画題、作者、賛者、員数、材質、法量及び指定関係の資料を掲げ、英訳を添えた。  一、当用漢字以外の漢字、および音訓表以外の読みを使用したものもある。 
●本巻協力者名(五十音順敬称略)  熱海美術館  安藤孝行  井上房一郎  W・R・ネルソン美術館  ヴィクトル・ハウゲ  江田勇二  小川広己  大阪市立美術館  大友佐一  王季遷コレクション  吉祥寺  京都国立博物館  久世民栄  組田昌平  クリーヴランド美術館  敬元斎  向嶽寺  高源寺  香雪美術館  高桐院  光明寺(京都)  光明寺(尾道)  清浄華院  定勝寺  成菩提院  J・M・クロフォード  静嘉堂  反町英作  東海庵  東京国立博物館  東京国立文化財研究所  東福寺  天授院  中村富次郎  根津美術館  畠山記念館  日野原宣  フオッグ美術館  フリア美術館  ブリヂストン美術館  プリンストン大学美術館  平林寺  ボストン美術館  前田育徳会  正木美術館  松永記念館  妙興寺  妙心寺  メトロポリタン美術館  薮本公三  薮本宗四郎  薮本荘五郎  龍光院  鹿王院 
(梁楷・因陀羅序説 より 一部紹介)  『梁楷・因陀羅』と題するこの巻には、これら両画人の作品と白描系の画蹟を登載する。本大系第三巻『牧谿・玉澗』が面的な「墨」の作品を収めたのに対して、線的な「筆」の作品を集めたわけである。本巻に採録した画作のなかには、近ごろわれわれが知ったものや、古くからその存在が知られながら、従来捨てて顧みられなかったものもあり、問題作も多少あろう。それらを収載したのは、今後考察の対象となる資料を、あらためて幅広く提供しようとする意図より出たものである。それらを含めて、収録作品の造形的・歴史的意味は、この稿につづく戸田禎佑・海老根聡郎両君の本論で明らかにされるであろう。なお第三巻と同じく、動物・植物主題の墨画を附載した。  梁楷は、牧谿・玉澗両画僧より早く、十三世紀のはじめ、幅広い作域に健筆を揮った画壇の巨匠である。牧谿にくらべれば、その作品を詠じた詩文や著録など、母国に遺した足跡は少くないが、梁楷の優作は、ひとりわが国にのみ伝存する。梁呰の画家伝としてつねに引用されるのは、元末の夏文彦の『図絵宝鑑』(巻四)である。それは梁楷をつぎのように記している。  梁楷、康平相義之後。善画人物山水釈道鬼神。師買師古、描写飄逸、青過於藍。嘉泰年画院待詔。賜金帯、楷不受、挂於院内。嗜酒自楽、号日梁風子。院人見其精妙之筆、無不敬伏。但伝於世者、皆草草、副之減筆。  そのいうところは、つぎのようなものであろう。梁楷は封建王侯の東平王(それが誰であるか、いまのところわからない)の宰相であった梁義の後裔である。人物・山水・仏教と道教の図像・鬼神の画を得意とした。南宋初期の画院画家の買師古の画風を学び、描写飄逸、師にまさっている。南宋の寧宗の嘉泰年間(1201-1204)に宮廷画院の待詔(画院画家最上の職階)となり、最高の栄誉である金帯を賜わったが、梁楷はそれを着用せず、画院の部屋に掛けたままにしておいた。酒を飲んで自ら楽しみ、自身で「梁の気違い」と称していた。画院の画家たちは、梁楷の精妙な描写に敬服しない者はなかったが、いま伝世しているのは、みな草草たる筆致の簡略描写の作品ばかりであり、これを「減筆」というのである。以上の『図絵宝鑑』の記述は、きわめて簡略なものであるが、伝存梁楷画の性格を端的に語っている点、貴重である。具体的にいえば、「雪景山水図」(図版  2)。「出山釈迦図」(図版3)は「精妙之筆」に当り、「草草」の画体とは、「六祖截竹図」(図版4)、「李白吟行図」(図版5)のごとき作を指すものと了解される。  院人最高の栄誉である金帯を画院内に放置して顧みない梁楷は、宮廷の規矩を度外視する反体制的、逸格の人物といえようが、そのような性格の然らしむるところか、禅僧と親交があり、その作品は禅林に受容された。梁楷と同時代の人である敬嬰居簡(1164-1246)の『北嫺詩集』(巻四)に「贈御前梁宮幹」と題する長詩があるが、まずそのはじめの四句を引用する。  梁楷惜墨如惜金 酔来亦復成漓淋  天籟自響或自痔 族史閣筆空沈吟  冒頭の句は、梁楷の減筆描を説くとき常に引かれるものであるが、この四句の意味は、およそこうであろう。梁楷が絵をかくところを見ると、墨を惜しむことかの貴重な金を惜しむようで、端的に要点だけを簡潔に画く。酒の酔いがまわってくると、筆の働きが生き生きとして、墨痕淋漓たる有様である。自然に風が吹き出したり止んだりするように、画想が梁楷の心中を去来するのであろう、筆を捌いて空しく沈吟することもある。(後略) 

(元代白描画-その諸相- より 一部紹介)  はじめに  中国の絵画には、山水画、道釈人物画、水墨画、著彩画など、題材や表現手段から類別されるさまざまな作品群があるが、それらとは別に白描画といわれる特殊な描法をもった一群の作品がある。いうまでもなく、白描画とは、墨の線だけによって対象を描出する墨画の一種であり、そのかぎりでは、表現技法上の一つにすぎないのであるが、それが特別な例外をのぞいて、人物画にのみ使用されがちな技法であるということと、長い伝統をもちながら、整然とした歴史的な順序をもって、絵画史上に一本の流れをなしてはいないで、むしろ断続的に、孤立して出現しては消失していく現象をくりかえしているようにみられるなどの点から、水墨画や著彩画とはやや異なった特殊な位置をしめるもの、といえるであろう。  ここでは、その歴史的な展開とか、それ固有の美的価値などを論ずるのではない。それらは筆者にとって手にあまる問題である。本稿では、そのせいぜい一面、しかも限定された時代におけるそれを、実際の作品からなるべく手をはなさないようにして、その造形的な性質を記述することでしかない。  はじめに、ここで何故に元時代という一時期をえらんだかについて、その理由を記しておかなければならない。なぜなら、元時代と白描画とを結びつけることは、いささか唐突な印象を与えるように思えるからである。たしかにこの時代には、後の時代に強い影響を与えたような白描画の大作家は出現していないし、従来のさまざまな画史の記述も、この時代を白描画の盛行期とする認識を伝えてはいない。それにもかかわらず、ことさらにこの時代をとりあげるのは、一つには、白描画のこの時期の遺品が比較的多いという単純な理由によるが、より積極的には、これら白描画が、後にのべるように単一なものではなく、他の時代にはみられない、重層的で多様な様相をもっている、ということにもとづいている。すなわち、それを描いた画家の身分からみれば、文人画家のそれや、禅余画家、職業画工の白描画が、それぞれニュアンスの相違をもちながら並存しているという状況。また、表現形式の側面から観察すれば、白描画が、水墨画や著彩画と、たがいに隣接して、浸透しあい、拮抗しあって複雑な姿を呈している。この豊饒といってもいいような重層的な様相を、遺品の上でたしかめることが出来るということによるのである。それ故、この様相にしたがって記述を進めるならば、白描画の具体的な姿を、ダイナミックに捕捉出来るように思えるのである。  次に、記述の方法についてのべておかなければならない。元代白描画の様相がいまのべたようなものとするならば、そのただ中に入りこんで個々の作品の記述をすすめると。その混乱した現象にひきずられて、その断片的。あるいは特殊な姿をとらえることが出来るにすぎない。それ故、ここでは、議論を進めるための枠組み、仮説として、李公麟の作品、就中、その「五馬図巻」(参考図版21・22)を白描画の理想形とみなし、元代白描 画をそれの一面を受けつぐもの、それとの距離のあるものとしてとらえ、記述していく方法をとろうと思う。なお、白描画という用語であるが、唐以前の文献には自画という名称が一般的であるが、いま問題にしている元時代には、それにかわって白描画という称呼が通行している。ここではそれに従って用いることにする。(後略) 
【作品解説 より 一部紹介】 
孝経図巻(部分) 伝李公麟  プリンストン大学美術館画巻絹本墨画  明の董其昌が編した『戯鴻堂法帖』の巻頭には李公麟の「孝経図」の巻首の書の部分が収録されているが、近年その真蹟(本図)が世に出て、絵画史の分野にも大きな問題を提供することとなった。  書としての「孝経図」は、初期の楷書の遺品として有名な鐘縣の「薦関内侯季直表」(二一二年)との書体の類似によって注目されており、季直表が李公麟の贋作ではないかとの論議もあるが、この問題の解決は書道史研究者によって与えられるであろう。  絵画としてみた場合、本図は様式的にも北宋期の画風を示しており、董其昌の李公麟筆とする見解は尊重すべきである。北宋末の大画家、李公麟の作品としては、ほかに戦後所在不明の「五馬図巻」があり、これと本「孝経図」の様式には、一見かなりの隔りがあるようであるが、人物のモデリングには共通の描写形式がみとめられる。「五馬図巻」は唐の呉道子を学んだという李公麟の唐画的な様式の濃い作品であり、古様な構成を示す「孝経図」は六朝風をねらったものとみることができよう。このような傾向は、北宋末の文人社会の、呉道子より顧之を選ぶといった風潮のなかで、李公麟のうちに生じた唐風から六朝風への変化、一種の古拙さをねらった表現とみてよいのではないだろうか。しかし、図に示した山水画の場面では、一見、白描的な描写のなかに、墨の濃淡を巧みに生かした点描風な要素も認められ、それはいかにも北宋末、李公麟の時代に  ふさわしい生新な表現となっている。(戸田禎佑) 

雪景山水図 梁楷 東京国立博物館 国宝 掛幅絹本著色  出山釈迦図 梁楷 日野原宣 重文 掛幅絹本著色  雪景山水図 伝梁楷 日野原宣 重文 掛幅絹本著色  この三幅は、『御物御画目録』の絹絵の部に  出山釈迦 脇山水 梁楷  とある三幅対に当ると考えられ、雪景山水の両幅には、「雑華室印」という白字印が押されている。『御物御画目録』は、足利義政を下らない時期における将軍家蔵品のうち、優作のみを著録した選択的画目であり、その奥書のごとく、真能(能阿彌。一三九七―一四七一)によって作成されたものと推定される。雑華室印を有する画幅は二十点近くが伝存しているが、いずれも中国画の名品として珍重された画蹟であるところから、足利義満の「天山」・「道有」の両印に対し、この印を足利義政の鑑蔵印に擬する説が有力である。しかしこの三幅対は、本来画家が一具の作品として制作したものではなく、わが国で取り合せたものにほかならない。道釈画を本尊とし、脇絵に山水あるいは花鳥の画幅を配合して三幅対・五幅対等とすることは、室町時代に盛行した特殊な鑑賞形態であって、牧谿の「観 音猿鶴図」のごときは、その成功した著例である。これを異種配合と呼ぶが、異種配合のために、新たに遣明船に託して画蹟を求めたこと(『蔭凉軒日録』長享二年〔一四八八〕五月八日の条)もあり、ここに偽蹟の混入する余地を生ずるのは当然であろう。なおこの三幅を配合したのは、出山の釈迦から苦行の雪山を連想したことによるものと思われ、雪景山水を雪山に当てたのであろう。  「出山釈迦図」(図版3)は、山林で苦行した釈迦が、劈開した岩の間から歩み出るさまを画く。面やつれし、頭髪もひげものびるにまかせて、沈痛な表情を的確にとらえ、枯枝のとげとげしい描写は、酷烈な苦行を象徴する。鋭く粘りのある筆致は、凛烈な印象を与え、図全体を岩石の面によって斜に切る放胆な構図の妙は、画面に動きと奥行きを生む。左隅の枯木の根もと近く、分れ出た枝の右側に「御前図画 梁楷」の落款がある。  「雪景山水図」(図版2)は、雪に閉ざされた北辺の国境地帯を騎馬の旅人の進み行くところを画く。近景水辺の土坡に老樹二株、枯枝には凍りついた雪が見える。雪原をへだてた左の山の、雪に荒れた急斜面の山肌には渇筆が使われ、頂に灌木のしがみつくように生えるさまを菊花点で画く。右にはさらに高い山が、雪空の淡墨のそとぐまであらわされ、両方の山あいに関門の建物があり、その右に 小さく一列の過雁が行く。この図はしかし実景に即して北地の風物を描いたものではなく、画家の構想力によって形成された作品であって、前景の低い樹の交叉と、左右から下る山の斜の線との対立緊張による画面の構成、雪景特有の明暗を鋭くつかんだ墨調の濃淡などにより、山谷の前後の重なり、距離の遠近、全景の奥深さがみごとに画きあらわされ、辺境の寒気と哀愁、さらに自然の限りない大きさ、壮重で厳粛な静けさが表現されている。  (後略) 

梁楷 りょうかい 中国,南宋の画家。生没年不詳。号は梁風子。嘉泰年間(1201年―1204年)に画院の待詔となった。南宋院体画の精緻(せいち)写実の描法をよくしたが,水墨画を白描化した減筆の描法による人物画でも名高い。前者の作品に《雪景山水図》《出山釈迦図》,後者の作品に《祖師截竹図》《李白吟行図》がある。牧谿,玉澗とならんで室町期以降の日本水墨画壇に大きく影響した。 
因陀羅 いんだら  中国,元末の禅宗画家。遺品の款記から華北開封の大光教禅寺の住持で,大師号を授かった禅僧と考えられ,また画中の題賛から,楚石梵琦に認められた余技の水墨画家と推測される。作例には祖師図や禅機図などがあり,稚拙ともみられる画技は個性的で画趣に富む。日本へは国宝指定の禅機図断簡5幅が伝わり,『布袋図』 (根津美術館) ,『智常禅師図』 (静嘉堂文庫) ,『寒山拾得図』 (東京国立博物館) などがある。 
★状態★ 1975年発行の古書です。月報にしわ、経年ヤケしみあり。  函入り、外観は通常保管によるスレ・うすヤケ程度。  本文は余白部などに経年並ヤケありますが、カラー写真図版良好、目立った書込み・線引無し、  問題なくお読みいただけると思います。(見落としはご容赦ください) 
<絶版・入手困難本>オークションにも滅多に出ない、貴重な一冊です。 古本・品にご理解のある方、この機会にぜひ宜しくお願いいたします。

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